着物をほどく効率的な順番(単衣着物編)
着物をほどく順番
着物をほどくとき、どこからでもほどけます。
しかし、ほどくにはただでさえ時間がかかるものです。
適当にほどいていては、生地を痛めたり、ややこしさの末、投げ出してしまったり…。
少しでも早く、すっきりとほどくには、やはり縫われている順番の逆をいくのが早道かと思います。
ざっくりと、ほどく順番は以下の通りです。
- 袖をはずす。
- うら衿の縫いをほどく。
- 共衿の縫いをほどく。
- 地衿の縫いをほどく。
- おくみ~裾のくけをほどく。
- おくみのくけ、縫いをほどく。
- 脇のくけ、縫いをほどく。
- 背伏せ布と背縫いのくけ、縫いをほどく。
- 内あげをほどく。
- 袖を細かくほどく。ふりのくけをほどく。
- 袖口のくけをほどく。
- 袖口下~袖底の縫いをほどく。
「10」~「12」の袖の細かいほどきは「1」の後、でも効率的に同じです。
和裁では袖は最初に縫う場合が多いので、その逆ということで最後に書きました。
いしき当てが付いている場合は、「5」と「6」の間にほどきます。
ほどく時の道具
- 小はさみ
- 目打ち
- 革細工用針
小ばさみは必須ですね。
一般的に目打ちか千枚通しを使う方が多いと思いますますが、私の場合は、それだと先がとがりすぎていて、生地を引っ掛けてしまうのであまり使いません。
先端が少し丸く、太くて長い針(わたしの愛用しているのは革細工用の針)がほどきやすいです。
また、重めの文鎮があれば、引っ張り器を付けておいて、引っ張りながらほどくときもあります。
和裁の心得のある方ならば、どちらも持っていらしゃることでしょう。
「縫い」と「くけ」
和裁をした事のない方が、着物をほどくといくつかの縫い方がある事を発見すると思います。
ほどく前に3つご紹介いたします。
合わせ縫い
普通に縫うこと。私は学生時代は”なみぬい”と習った記憶があります。
合わせ縫い
折りくけ
布を折って、針をその中で通し表地生地をほんの少しだけすくいます。
これを等間隔でくりかえします。
裏側 表側
本ぐけ
二枚の布の縫い代どうしを合わせて、縫い代のみを両布同じ量づつすくいとじていきます。縫い目は表地に一切見えません。
縫いとじたところ 縫い途中
今回は単衣着物編ということで、着物のあらゆるところが折りくけ縫いになっていると思います。
この縫い方を習得するのは少し練習が必要ですが、ほどくのはさほどでもありません。
私たちの修業時代はこのくけ目はなるべく小さく目立たないように言われ、糸も縫い糸とは違い細く滑りのいい糸をくけ用として使っていました。
しかし、昔の普段着などは、くけは縫いとおなじ糸でくけてあります。
またくけ目も荒いものも多いようです。
時間の経った着物は、長年の湿気で糸がきしんで、ほどき辛いものもあれば、糸が腐ち気味でポロポロ取れてきたり、その状態は様々です。
悉皆屋さんほどではありませんが、いろいろとほどく度に、私は職業上、先輩和裁士の方々と対話している気分になります。
色々な裏技や秘密が隠されていることもありますし、その縫い目、縫い跡に人間らしさを感じたりもして…。
孤独に仕事をする職人の寂しい病かもしれませんね。